#1
荻窪駅 - 2017.08.16
味、値段、雰囲気、どれをとっても満足度の高い「焼鳥どん」 初めての「ボッチ飲み」にふさわしい荻窪の人気店
未経験者にとって、一人飲みのハードルをクリアするのは意外と難しい。入り口を開けた瞬間、カウンターにずらりと並んだ常連が一斉にこちらを振り返りはしないか、ガランとした店内に気難しそうな店主がにらみをきかせていないか――。初めての店の扉を開けるときは、いつも不安がつきまとう。
一人飲みビギナーでも安心して入れる
でも荻窪の「焼鳥どん」のカウンターには一見客ですんなり座ることのできる安心感がある。
例えば、”酒場の聖地”と呼ばれるエリアの名店のように、常連が店のルールかのような雰囲気はない。かといって、青山や六本木のような港区的な気取りも、銀座の敷居の高さももちろんない。
焼鳥は正肉、自家製つくね、上レバなどなどすべて1本80円。この値段にして、炭火焼き、しかも焼きの加減もきっちり仕上げてくる店はそうそうない。
串をしごけばついつい顔はほころび、「シャリ生レモン!」「シャリホッピー!」という幸せの呪文を次々唱えてしまう。
言わずもがなかもしれないが「シャリ」とは焼酎を凍らせてシャーベット状にしたもの。冷やしたジョッキ+凍らせた焼酎+割り材という”割り合わせ”で、最後まで薄まることのないキンキンに冷えたサワーで喉を潤すことができる。「シャリ生レモン」は「シャリ+生レモンサワー」、「シャリホッピー」なら「シャリ+ホッピー」というのは大衆酒場好きのみなさんならご存じだろう。
おひとりさま女子の姿もちらほら
ちなみに訪れたこの日もカウンターを埋めた人々の属性は見事にまちまち。30代のカップルが楽しげに会話をはずませ、50代の同僚と思しき2人組はガハハと背中をたたき合っている。その横には生ビール片手に文庫本を読みふける、20代のおひとりさま女子。日によっては女子同士の客も多い。
カウンター越しに注文を受けるのは、大阪出身で冗談好きな二の腕が超太いオーナー兄弟。
パワーリフティングの全国大会上位入賞常連という頼れる体躯から、大阪風味の軽妙かつ絶妙に意味のない爆笑トークがよどみなく投げかけられる。
ただし、この大阪出身の筋肉兄弟は神出鬼没。各店舗常駐のスタッフとともに3店を切り盛りしているので、いつどこの店でお目にかかれるかはわからない。荻窪店でも店主が専属スタッフをイジり倒す日もあるし、店専属のスタッフと明るくなごやかに落ち着いて飲める夜もある。
絶品の煮込みは、一人メシにも嬉しい
そしてこの店は「センベロ」としてだけではなく「定食屋」として使うこともできる。この店の看板メニューは鶏もも肉を昆布出汁でほろりとなるまで煮込んだ「煮込み」(380円)。そこに+100円を上乗せすればライスが投入された絶品の鶏雑炊になる。
もし一人飲みへの心のハードルが高くても、この店なら大丈夫。仕事帰りに「飲み物+煮込みご飯」を食べに寄るつもりでカウンターに座ればいい。もっともこの店は一人客にとてもやさしい。本来、2本以上からの注文となる1本80円の焼鳥も、一人客なら1本から注文できる。
一人客にもやさしく、一人飲みだけでなく一人メシにも対応ししてくれる。荻窪の「焼鳥どん」は「初めてのぼっち飲み」にうってつけの店なのだ。
写真:富竹次郎
松浦達也
フードアクティビスト/編集者/ライター
東京都武蔵野市出身。『dancyu』などの食専門誌から一般誌、新聞、書籍、Webなど多方面の媒体で、「調理の仕組みと科学」「食文化」「食から見た地方論」など幅広く執筆、編集を行う。また、テレビ、ラジオなどで食トレンド/ニュース解説も。近著に『家で肉食を極める! 肉バカ秘蔵レシピ 大人の肉ドリル』(マガジンハウス)ほか、自身も参加する調理ユニット「給食系男子」名義で企画・構成を手がけた『家メシ道場』『家呑み道場』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)はシリーズ10万部を突破。最新刊は『新しい卵ドリル おうちの卵料理が見違える!』(マガジンハウス)。日本BBQ協会公認BBQ上級インストラクター。有限会社馬場企画代表取締役。
Detail
焼鳥どん 荻窪店
- 住所東京都杉並区荻窪5-16-7 スカイコートエクセレント荻窪 1F
- 最寄駅JR「荻窪」
- 電話03-3392-9845
- ジャンル居酒屋、焼鳥
- 喫煙不可(外に灰皿あり)